フェアリー ロートダイン 

 

 

 

 

よく「ヘリコプターの免許を持っていて・・・」とか言うが、正確には回転翼機の免許であり、ヘリコプターは回転翼機の一種に過ぎない。
その他の回転翼機としてはレジャー機としてお馴染みのオートジャイロ、その他にはブレードを樽型にまとめた物を縦に回転させるサイクリックジャイロなんてのも存在する。

このロートダインも回転翼機の一種であり、どのジャンルにも属しない。どちらかと言うとヘリよりもオートジャイロに近い乗り物である。
簡単に言うと、離着陸時はヘリコプターっぽいもので、巡航中はオートジャイロっぽいものだと思えばわかりやすい。
あーそうそう。エアーウルフはこのジャンル(爆笑)

仕組みはこうだ。
離陸時は翼に取り付けられた2基のエンジンが、エンジンとは別に存在するコンプレッサーを駆動する。コンプレッサで作られた高圧空気はどういう経路か、とにかくローターブレード先端にある座薬形(笑)の燃焼室までたどり着き、そこで燃料と混合され、その噴射ガスでもってローターブレードを回転させるという、チップジェット式という手段を取る。
つまりローターブレードは機械的には駆動されておらず、シャフトまわりの反トルクがないのでテールローターは不要で、ローターを駆動するトランスミッションも当然存在しない。

コンプレッサ駆動に使うエンジントルクは80%で、残余の20%はそのままプロペラを駆動し、左右のヨーイングは左右のプロペラ推進の差異で行う。

これでもって離陸したあとは、コンプレッサはクラッチで切り離され、チップジェットは停止、全出力はプロペラの駆動に使用される。ローターは自動回転を続けて巡航中は揚力の40%を受け持ち、残りの60%は固定翼が受け持つという、いろんな乗り物の要素がゴッチャゴチャに合わさった、まったくもって変な怪しい乗り物である。

着陸は先の要領によるヘリモードでも、そのままオートジャイロモードでも可能である。

このカラーリングとキワモノシステムからして旧ソビエト製のような感じだが、イギリス製である。実はイギリスはロンドン・シティ空港やら北海油田やらでこの手のVTOLやSTOL機の研究や導入、運用には結構熱心である。
この機体の場合は、端的に言うと「空港まで行くのウザいし都市間をVTOL機で繋いじゃったら?」っていうもので、当初は20人乗りぐらいか?とか計画してたが50名は欲しいねという話で、結果として空飛ぶボンレスハムが完成した。

機体規模は、胴体長約18m、ローター直径約27m、総重量15tで、これって超でかいじゃん!
チヌークの胴体(全長16m)にMH−53Eのローター(直径24m)がついてるようなもんだと思ってもらえればいい(CH−47はローター直径18m)。「テニスコート2面分で離着陸可能!!」が宣伝文句だったそうだが、はっきり言って無理っす(失笑)

仕組みは上記のとおりだが、ローターが駐機中は垂れ下がるのが問題で、これでは垂直尾翼に当ってしまう。そこで主直尾翼は可倒式にして、離陸時に「うい〜〜ん」って動力で立てて使うというこれまた怪しい構造である。

ちなみに機体は軍部の興味も引き、日本航空を始めとする各航空会社からの引き合いもあって、試作機が完成し1957年に初飛行に成功した。そもそも固定翼機みたいなもんだから、次々に回転翼航空機の記録を塗り替えていき、速度は166ノット(307km/h)にも達し、しかも燃費も期待通りの性能であった。

順風満帆に見えたこの計画。その後どうなったかというと、結局この手の航空機にお約束の開発の遅れや開発費の高騰等で次々と取り巻きは居なくなっていった。

しかしながら、最大の問題はチップジェットの発する騒音で、600フィート(180m)離れてても113dbという想像を絶するものであった。もうここまで来ると耳を聾するとかそういうレベルではない。
一応、コンプレッサを2基に増やす、チップジェットを各2コ式のクラスタ式にする、エンジンにも必要な消音を施すなど計画があったらしいが、それでも200フィートで95dbでイギリスではどうだか知らないが少なくとも日本の市街地では実用ならないどころか、怖い人達にヘリポートを焼き討ちされるのは必至だ(笑)。

大体にしてヘリモードの能力も低かったらしい。
Mun@geの予想では、おそらく実用されていればVTOL運用はされず、当初回転翼を実用回転まで加速させた後はジェットを切って20〜30m程度の滑走で離陸していただろうと思う。ようは巨大なオートジャイロだ。

そんなわけで、結局政府の援助もなくなり、実用もされずに1962年にあえなく計画は終了してしまった。
事故もなく、立派に試験飛行をこなした原型機は1機しか無かったが、なんとまあ、この革新的な航空機をスクラップにしちまうという暴挙で、現在はエンジンナセルと輪切りになった胴体の一部しか残っていないという。

ところでMun@ge個人としてはオートジャイロはもっと見直されるべき乗り物と思っており、自家用向けの実用的なオートジャイロを作るべきだと思っている。
噂によるとR−44クラスなら10mも滑走すればどんな条件でも浮くらしいから、これならほとんどの公共用ヘリポートで運用できる。

それに、どーせみんなホバリングなんてしないでしょ?(爆笑)