シコルスキー CHー54 ターヒ

 

乗り物や機械好きの諸兄なら子供の頃一度はあるだろう。自分だけの理想の車、バイク、飛行機なんかをカレンダーや広告の裏にしたためたことを。
そういうものは必ずギミックがあるものだ。一番多いギミックは合体か?


そんなどんな任務にでも対応できるよう、様々なモジュールを合体できるようにした妄想ヘリコプター。なんとその厨二病航空機を実際にカタチにしてしまった機体がこの世には存在する。


それがそのCH-54である。ババーン!!(失笑)

それがその結果かよ!?

もう顎ガクーン、目玉ボーン、膝ガクガクガクー
異様なんてーもんじゃない。今まで紹介したヘリの中でも群を抜いてアブノーマルである。なにせ胴体が無いんだから(笑) 胴体がない航空機なんてB-2ぐらいなもんじゃないだろうか?

ちなみに昔の図鑑にはこの機体が紹介されていたりするが、必ずコンテナを抱いている。おそらく「パパー、このひこーきどうたいがないよ?」「う!?う〜む??」とかいう家庭内の事故を防ぐためだろう。
胴体無いぐらいだったら(ほら、あまりにも状況が非常識だからワープロが一発で変換しなかったじゃないか(笑))まだしも、この人、スキン(外板)がない。裸っちゅうか獲物のイノシシの皮剥いだ的な。


配管はむき出しだし、シャフトは背中を普通に伝ってるし、エンジンなんて「台上試験ですか?」って感じに鎮座していらっしゃる。
要は無駄なんだろうな(笑)。外板なんかで使うデッドウェイトをペイロードに食われれるぐらいだったら脱いだらーうりゃー的な。
…どっちかっていうと服に金かけるんだったら趣味にっていうオタッキー的か(猛省)


そんなわけで、ど派手(!?)な外見に添うように、性能も半端ない。馬力こそ正義のヘリタコプーにおいて、CH-54のエンジンはP&WJFTD12A-4Aというエンジンを2基搭載しており、単基でも連続定格4000hpを発揮する。
散々基地外出力だと言われているCH-47のT-55-712すら、改良されて3150hp弱なのだからこれは凄まじい。
ベトナム戦争の時にはハマった装甲車を引っこ抜くなんていう仕事も任されたそうだから、能力は言うに及ばず。


もちろん、厨二病アイテムも健在である。クリーンで使えばなんでも吊れるスーパー物輸機、コンテナを合体させれば最強輸送機、人員空輸モジュールを付ければへリボン可能、病院ユニットを付ければ最強ドクヘリ…
腹に付けるモジュールはミルバンスペック準拠なので、ドーリーを取り付けて、高く掲げられたテールブームの後方から、トラクターかなんかでうりゃうりゃ押したり引いたりして挿入して装着する。
ところで、モジュール自体はがっつらと固定されるためブラブラはしない。


こんなに有用なヘリコプターなのだから、CH-47がとうとうグラスコクピットのエンジン機体強化型の「F」に進化したように、今でも改良して使われているんだろうねえ…
なんつって。実はもう全機引退して軍用のCH-54は存在しない。
ぶっちゃけね、個人的な拙い経験で言わせていただくと、この手の汎用性装備とやらは大概に付けっぱなしになるか、外されて格納庫の端っこにシートにくるまれたり、倉庫の肥やしとなって、数年後何も事情を知らない若手の整備に発掘され、大いに驚かれたりするものである。


一応このモジュールは成功したことになってるが、おそらく末端の文句の言えない組織ではさぞや面倒臭がられたに違いない。
真の汎用性というのは、例えば人間で言うと、厨房でケーキ焼いてたと思ったら、是非シェフと話したいとかいって厨房にやってきた日本人高官とシェフとの間にたって日本語通訳やり始め、で、その日本人高官に突如襲いかかった暴漢を瞬殺みたいな、要するにスティーブン・セガールのような感じで瞬間的に何でも応対できなければならないものなのだ(笑)
いちいち前日から何時間もかけていろんな機能をその都度付け替え、そしてその間はその用途しか使えず、しかも全米軍総数で100機しか無い大型ヘリコプターなんて面倒くさくって使いたくもない。


しかしながら、その汎用性能を強力なスリング機として、あくまで専用機として見出した企業もあった。エリクソン社がシコルスキー社からなんやかんやを買い取って、民間機S-64を一手に運用し始めたのだ。しかもだよ、今だに新造機を造り出している(CH-54の廃機のオコシかもしれないけど(笑))。


確かにペイロード11tの能力をもってすれば、これしか出来ないという仕事も多かろう。例えば山岳地の一番高いところに電波中継所の塔を建てたいとか思ったら、これがあればイッパツでしょうね。
しかし、これは興味深い。軍は装備や部隊の編成を作り替えて、より小型で性能の劣るCH-47やUH-60だけでへリボーン作戦を達成できるように改変してしまったし、一方の民間企業はこの機にしか無い性能を最大限に活かして、ニッチかもしれないが収益を上げている。こういうのをイノベーションというのだろうね。


ともあれこの機体でもっとも注目に価するのは、空中消火ユニットだろう。
水タンクは1万リットルもあり(ヒエー)、取水はそのタンクから象の鼻のようなホースをベロンチョと水面に垂らして行う。バキュームポンプは非常に強力であり、約1分間でベリータンクが満タンになる。
このホース取水ってのはバケツでザブッと漬けるのに比較してもどかしいように見えるかもしれないが、実際はバケツで水を汲むと一旦ホバリングしてからバケツが開かないようにとか、流れないようにとか、独特のテクニックを駆使して水につけて、さらにそこから1分間取水であるから、ホース吸水のほうがはるかに早い。


しかもね、この広い水面でホバリングって難しいんすよ(涙)
水面に波紋が広がるから、自機が恐ろしい勢いでバックしているような錯覚に襲われ、パイロットが機体を前進させてしまうのだ。その結果、バケツにはちっとも水が入らない。


空中消火訓練や実際の場面の報道で、ヘリのバケツによる取水のシーンが撮影されていたら見てみるといい。機体の後ろにバケツが流れていたらそれはそういう理由によるもので、そこから機体を立てなおして取水するとなると、さらに数分を要す。(まあ、パイロットが慣れていれば別ですけどーorz)


ところがこの機体はホバリングする必要がないから転移揚力も切らなくていいし、パワーも余裕を持って安定させた状態で取水できる。早いというのはまさに正義で、このヘリを使った空中消火のシーケンスには停止という場面が存在しない。しかも水量1万トン。
空中消火にしても物資輸送にしても、キモはいかに早くパターンを回して回数をこなすことである。特に消火は相手は待ったなしの火だから、ちょっとでも気を抜くと火勢はすぐに復活する。早く大量の水を撒ければ、例えば帯状に予め水を撒いておけば、簡易防火帯なんてものも作ることが出来る。いやー、パワー4000hp×2で、ホバリングしなくていいのかあ…

オイラは以前6000ftという湖面で水を汲んだことがあったんだが、空気が薄い上に機体の性能やら機体特性やらなんやらが変わってしまって
「ちょ!しっしししずむっ!沈む!!ダムの堰に当たる!あたるーっ!!あばばばばば」
「そそそs、速度!速度だ出せっあばばばばばば」

…そんなわけで、これを見た皆さんはダムで水をくむ時は、突堤のなるべく後ろのほうで汲んだほうがいいよ…