ベル 214ST 

 

究極のUH-1ファミリー。

当時まだ親米だった頃のイラン王朝がベル社に陸軍用汎用ヘリとして発注した機体。

元々の機体はCH-47に使われる強力なT55エンジン1基を搭載した214Bという機体だが、これを双発にして(エンジンはT55ではない)胴体を延長させて再設計したものである。

かくして機体は完成したものの当のイラン王朝は宗教クーデターにより崩壊 してしまい、この機体自体もあわや反古の憂き目にあってしまうところだったのだ。

しかし、これでめげるベル社ではなかった。いままでの社のラインナップにない、折角完成させた中型機をみすみすドブに捨てるようなことはしなかった。

そもそも「ST」は「ストレッチド・ツイン」の略だったのだが、これをいつのまにやら「スーパー・トランスポート」と変えて世界各国に売り込むことになった。

しかし、考えてみればかなり強引な機体である。こんなデガイのに2枚シーソ ーローターに降着装置はスキッド(ホイル式も選べる)である。

ヘリの出力を最終的に受け止めるのは車ならホイルだがヘリはそれがローターに相当する。車でも高性能車には太いホイルを履かせるように、ヘリだってそれなりの出力を受け止めるには広いローターブレードが必要になってくる。

普通は3枚とか4枚とかどんどんブレードの数を増やして対応するのだが、当時のベル社はそんなことしなかった。ブレードそのものの面積を大きくしたのだ(笑)

車でもオンオフ車問わず高出力車は4WDを採用するようになった昨今、言うなれば2枚ローターは車で言うとデューンバギーのような一昔前の簡易な技術でしかないないのだ。性能の限界は言うに及ばずである。

しかもシーソーローターというのはプリコーニングといって、あらかじめ想定した一番使うであろう速度と重量に最適になるように固定されていて、それ以外の状況ではローターのしなりやら、人間が我慢するとか(笑)で対応しなければならない。

この214STの場合はノーダルビーム吸震器や機体補強で対応しているが、この規模の機体でそれだけはキビシイ。

スキッド式というのは簡単で軽く丈夫で接地圧も低くて、いいと言えばいいのだが、移動するときにはホバリングしなければならず、この規模の機体で周囲のことを考えるとこの上なく迷惑であるし、パイロットも気を遣う。地上での取り回しも大変である。

しかも、地面とエンゲージしたあとの機体重量は、このスキッドのクロスチューブという弓形のパイプのしなりで受け持つが、これが「しなりで持つ」というのがキモで、にあまり剛強な素材で作るわけにもいかず、びっくりするぐらいヘタってくる。

具体的にいうと開いてくるのだが、基地祭などで海上保安庁や陸上自衛隊の212やUH-1が並べておいてあるような機会があれば観察してみるといい。しっぽにテールスキッドという棒が突き出ているが、その高さが古い機体ほど下がっているのがよく分かる。スキッド式の限界は単発UH-1ぐらいまでだろうと思う。

やっぱりというかなんというかコレを使ってやろうというカスタマーは少なく、ベルもいつものパターンなら414STとか作ってくるモンだが、よほど痛い思いをしたらしく、その後この規模のヘリは作っていない(オスプレイという機体はあるが)

日本では一時期3機ぐらいが飛んでいたが、今では国土交通省機(元建設省機)として1機が使われているのみである。

このヘリは細長くてなかなか格好いいのだが、キワモノ機(バイク乗りは「変態」という)であることはほぼ間違いがなく、ヘリ好きが見かけたら思わず「ラッキー」と口にしてしまうのは必至と思われる。

ちなみに変態機らしく、ピッチレバーも相当アヤシイ作り込みがなされている(失笑)

 

ところでこのイラストは「蒸気パンHomepage」に掲載されていた写真を元に制作させて頂きました。日本の小型機をほぼすべて網羅していると思われる、凄い量の写真が見られます。